はじめに
「会社を辞めたい」そう伝えた時、会社から思いがけない言葉を投げかけられ、途方に暮れていませんか?
「損害賠償を請求するぞ」「後任が来るまで辞めさせない」「親に連絡するぞ」――。
真面目で責任感が強いあなたほど、こうした言葉に追い詰められ、「自分は間違っているのではないか」「会社に迷惑をかけてしまう」と、身動きが取れなくなってしまうかもしれません。
しかし、元労働基準監督官として、私はこれまで数多くの退職トラブルを見てきました。そして、はっきり言えることがあります。
会社があなたに突きつける「辞めさせない」という言葉の多くは、法的な根拠に乏しい、あるいはハラスメントに当たる「脅し文句」です。
このブログ記事では、会社がよく使う7つの脅し文句を挙げ、それぞれにどう向き合えばいいか、元労基の視点から具体的に解説します。ほとんどは聞き流して大丈夫なものですが、中には「記録を残す」「窓口に相談する」など、一歩動いたほうがいいものも含まれています。あなたが仕事で壊れてしまう前に、選べる道を増やすための知識を身につけましょう。
会社がよく使う「辞めさせない」脅し文句 7選
1. 「損害賠償を請求するぞ」

上司「お前が辞めたら会社に損害が出る。損害賠償を請求するぞ!」
元労基の視点
労働者が退職することで会社に損害が生じたとしても、一般的には、労働者に故意または重大な過失などがない限り、通常の退職に伴って損害賠償が認められるケースは多くありません。会社が損害賠償を請求するには、労働者の故意・重大な過失と、会社に生じた具体的な損害を厳密に立証する必要があります。通常、退職によって生じる業務の停滞などは、会社が負うべき経営リスクとみなされます。ただし個別の事情によって判断は変わるため、不安な場合は労働基準監督署や弁護士に相談してみてください。
2. 「次の会社に悪評を流すぞ」



「辞めたらお前の次の転職先に、会社での悪評を流してやるからな!」
元労基の視点
これは名誉毀損や信用毀損に当たる可能性がある、ハラスメント行為です。会社が元従業員の転職先に不当な情報を流すことは、法的に許されません。もし実際にそのような行為があった場合は、弁護士や労働基準監督署に相談し、法的措置を検討すべきです。
3. 「後任が来るまで認めない」





「後任が決まるまで辞めさせない。無責任なことは許さないぞ!」
元労基の視点
民法第627条では、期間の定めのない雇用契約の場合、労働者は2週間前までに退職の意思表示をすれば、会社の承諾がなくても退職できると定められています。後任の有無は、退職の有効性には影響しません。後任の確保や引き継ぎ体制の整備は、本来、会社側が担うべき役割です。あなたが無期限に会社に拘束される義務はありません。
4. 「勝手に辞めるなら給料ゼロ」



「勝手に辞めるなら、今月分の給料は払わないぞ!」
元労基の視点
これは労働基準法違反にあたります。労働の対価である賃金は、労働者が働いた分だけ全額支払われるべきものです。会社が一方的に賃金を支払わないことは許されません。もし賃金が支払われない場合は、労働基準監督署に相談し、未払い賃金の請求を行うことができます。
5. 「親や実家に連絡するぞ」



「こんな無責任な辞め方をするなら、親に連絡してやる!」
元労基の視点
これはプライバシーの侵害、またはハラスメント行為に当たる可能性があります。あなたが成人している場合、会社があなたの親や実家に連絡する正当な理由はありません。このような言葉は、精神的な圧力をかけることを目的としたものであり、決して許される行為ではありません。実際に連絡された、あるいはその可能性が高い場合は、日時と内容を記録した上で、労働基準監督署や弁護士に相談してください。
6. 「離職票を出さないぞ」



「辞めても離職票は出してやらないからな!」
元労基の視点
離職票は、失業給付の申請などに必要な公的な書類であり、会社には労働者からの請求があれば遅滞なく交付する義務があります。会社がこれを拒否することはできません。もし会社が交付しない場合は、聞き流すのではなく、ハローワークに相談してください。ハローワークから会社に督促してもらえます。
7. 「退職金は1円も出さない」



「こんな辞め方をするなら、退職金は1円も払わない!」
元労基の視点
退職金は、就業規則や退職金規定に基づいて支払われるものです。会社が一方的に「払わない」と主張することはできません。まずは会社の就業規則や退職金規定を確認しましょう。もし規定に沿った退職金が支払われない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談してください。
①損害賠償 → 聞き流してよいことが多い(不安なら相談を)
②悪評を流す → ハラスメント。実際にあれば相談を
③後任が来るまで認めない → 聞き流してよい
④給料ゼロ → 明確な違法。労基署へ相談を
⑤親への連絡 → 記録を残し、相談を
⑥離職票を出さない → ハローワークに相談し督促してもらう
⑦退職金は出さない → まず就業規則を確認
今日からできること:冷静な対応と情報収集


会社からの脅し文句に直面した時、最も大切なのは冷静に対応することです。感情的にならず、以下のステップを踏んでください。
いつ、誰から、どのような脅し文句を言われたのか、日時、相手、内容を詳細にメモしておきましょう。可能であれば、録音も有効です。
会社の就業規則には、退職に関する規定が記載されています。まずは自分の権利と義務を正確に把握しましょう。
友人、家族、信頼できる同僚に相談するだけでなく、専門機関の力を借りることをためらわないでください。
相談窓口
・労働基準監督署 → 労働基準法違反に関する相談や、会社への指導・勧告を求めることができる
・弁護士 → 法的なアドバイスや、会社との交渉、訴訟の代理を依頼できる
・総合労働相談コーナー → 厚生労働省が設置している無料の相談窓口。労働問題全般について相談できる
おわりに
「会社を辞める」という決断は、人生における大きな転機です。その決断を会社からの不当な圧力によって歪められる必要は、決してありません。
元労基として、私は「仕事で壊れる前に、選べる道を増やす」ことの重要性を痛感しています。あなたの心と体を守るために、正しい知識を持って、落ち着いて対応していきましょう。
もし、あなたが今、一人で悩んでいるのであれば、どうか思い出してください。あなたは一人ではありません。そして、あなたには、自分自身の人生を選択する権利があります。
※本記事の内容は一般的な情報です。実際に法律違反やハラスメントにあたるかどうかは、個別の事情によって判断が異なります。詳しくは労働基準監督署や弁護士にご相談ください。







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