「辞めるなら損害賠償を請求する」
「後任が決まるまで辞めさせない」
退職を伝えたあと、会社からこんな言葉を返されたら。
「本当に辞めていいのだろうか」と、不安になるかもしれません。
会社から言われたことが、すべて法律上のルールとは限りません。
引き止めなのか、法律上の問題なのか、実際に対応が必要なのか。
まずは、そこを分けて考えます。
- その場で結論を出さない
- 言われた内容を記録する
- 法律・就業規則・会社の主張を分けて確認する
退職時に言われやすい7つの言葉を取り上げます。
それぞれ、何を確認し、どこへ相談すればいいのか。
元労働基準監督官の視点から整理しました。
退職時に会社から言われやすい7つの言葉
「そんな言葉は全部無視していい」とは言い切れません。
根拠の乏しい引き止めもあれば、内容を確かめる必要がある話もあります。
1.「辞めたら損害賠償を請求する」

「損害賠償」と言われると、怖くなりますよね。
でも、会社がそう言っただけで、支払義務が決まるわけではありません。
たとえば「途中で辞めたら10万円」という決まり。
労働基準法16条は、労働契約の不履行について、違約金や損害賠償額をあらかじめ決めることを禁止しています。
ただし、実際に生じた損害についての請求まで、すべて禁止されているわけではありません。
かずき「損害賠償と言われた=払わなければならない」でも、「絶対に無視してよい」でもありません。具体的な理由や金額を確認しましょう。
また、会社が損害賠償を主張していることを理由に、働いた分の賃金を一方的にゼロにしたり、当然に相殺したりできるわけでもありません。
請求書や内容証明郵便が届いたら、そのまま放置しないでください。
書面を持って弁護士に相談する方法があります。
2.「次の会社に悪いことを言う」
「次の会社に悪く言ってやる」。
そんなことを言われても、その場で言い返す必要はありません。
実際に何が伝えられたか、内容が事実か、どのような目的・方法で伝えられたかによって法的な評価は変わります。
すぐに「名誉毀損だ」と決めつけるのではなく、まず発言を記録します。
- 誰が言ったか
- いつ・どこで言われたか
- 具体的にどんな言葉だったか
- メール・チャット・録音などの資料
実際に転職先へ不利益な情報を流されたなど、具体的な被害が出た場合は弁護士等への相談を検討します。
3.「後任が決まるまで辞めさせない」


「後任がいないから、辞めるのは待ってほしい」。
会社の事情は分かっても、いつまで待てばいいのか分からないですよね。
後任が決まらないことと、退職できるかどうかは別の話です。
期間の定めのない労働契約では、民法627条に退職の申入れから2週間という原則があります。
会社の承認がなければ退職できない、という仕組みではありません。
ただし、有期労働契約では別のルールがあります。
また、会社の就業規則で退職手続きが定められている場合もあるため、契約形態と就業規則を確認してください。
すでに退職届を受け取ってもらえない、退職日を認めてもらえないなど、具体的な妨害が始まっている場合はこちらへ進んでください。


4.「勝手に辞めるなら給料は払わない」
退職の仕方に会社が不満を持つことはあるでしょう。
だからといって、すでに働いた分の賃金を一方的にゼロにできるわけではありません。
労働基準法24条では、賃金は原則として全額支払うこととされています。
ただし、所得税・社会保険料など法令による控除や、一定の労使協定に基づく控除など例外はあります。



「退職するから今月の給料は全部なし」という話と、法令などに基づく通常の控除は別です。
実際に賃金が支払われない場合は、労働基準監督署への相談を検討してください。
5.「親や実家に連絡する」
「親にも連絡するからな」と言われたら、家族まで巻き込まれるのかと不安になるかもしれません。
ただ、家族への連絡がすべて違法になるわけではありません。
緊急連絡先として登録されている、本人の安否確認が必要だったなど、個別の事情も考えられるためです。
一方で、退職を思いとどまらせるために家族へ繰り返し圧力をかけるなど、嫌がらせに近い対応が続く場合は、記録を残して相談してください。
退職代行利用後に家族へ連絡されたケースも含め、会社からの直接連絡への対応はこちらで整理しています。


6.「離職票は出さない」
離職票については、会社が単独で作成して終わる書類ではありません。
雇用保険の被保険者が離職した場合、事業主は原則として、資格喪失届と必要に応じて離職証明書をハローワークへ提出します。
その手続きに基づいて離職票が交付されます。
離職票が必要なのに、会社が手続きを進めてくれない。
そんな場合は、会社とのやり取りだけで抱えず、ハローワークへ相談してください。



離職票の問題は「会社との口論」で解決しようとせず、雇用保険を扱うハローワークへ確認するのがポイントです。
7.「退職金は1円も払わない」
退職金は、どの会社にも必ずある制度ではありません。
まず、就業規則、退職金規程、労働契約などに退職金の支給条件が定められているかを確認します。
支給条件を満たしているのに規程どおり支払われない場合は、会社へ確認したうえで、総合労働相談コーナーや労働基準監督署などへ相談する方法があります。
7つの言葉は「まずすること」を決めておく
「損害賠償」「給料は払わない」「離職票は出さない」。
どれも、突然言われたら戸惑う言葉です。
でも、最初に確認することは、それぞれ違います。
- 損害賠償を請求する
→ 具体的な理由・金額を確認。実際の請求なら専門家へ - 転職先に悪く言う
→ 発言・実際の行為を記録する - 後任が来るまで辞めさせない
→ 雇用契約と退職ルールを確認する - 給料を払わない
→ 給与明細等を残し、未払いなら労基署等へ相談する - 親・実家へ連絡する
→ 目的・内容・回数を記録する - 離職票を出さない
→ ハローワークへ相談する - 退職金を払わない
→ 就業規則・退職金規程を確認する
会社から強い言葉を言われたときの3ステップ


損害賠償や退職日の変更などを求められても、不安なまま即答する必要はありません。
日時、相手、発言内容を記録し、メール・チャット・給与明細・就業規則など関連資料も保存します。
「どこへ相談すればよいか」は問題の種類によって変わります。
相談先は「何を言われたか」で選ぶ
退職のトラブルは、すべて労働基準監督署だけで解決できるわけではありません。
| 相談内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 退職の引き止め・嫌がらせ・職場トラブル全般 | 総合労働相談コーナー |
| 未払い賃金など労働基準法違反の疑い | 労働基準監督署 |
| 離職票・雇用保険 | ハローワーク |
| 損害賠償など具体的な法律問題・代理交渉 | 弁護士 |
総合労働相談コーナーでは、解雇、退職、賃金、いじめ・嫌がらせなど幅広い労働問題を無料で相談できます。
法令違反の疑いがある場合には、担当部署へ取り次がれることもあります。
まとめ|強い言葉を言われても、その場で信じ込まない
退職を伝えたのに、強い言葉で引き止められる。
「もう辞められないのかもしれない」と感じることもあるでしょう。
でも、会社からの言葉には、法律の話も、就業規則の話も、単なる要望も混ざっています。
すべてを同じ重さで受け止める必要はありません。
- その場で約束しない
- 発言と資料を記録する
- 法律・就業規則・会社の主張を分ける
- 必要なら内容に合った窓口へ相談する
会社から言われた内容が「本当に正しいルールなのか」を整理したい場合は、こちらの記事へ進んでください。


すでに退職届を受け取らない、退職日を認めないなど具体的な妨害を受けている場合はこちらです。


※本記事は2026年9月時点の一般的な制度・法令をもとに整理しています。実際に違法行為や損害賠償責任等が生じるかは、発言内容、雇用契約、会社の規程、具体的な事実関係によって異なります。個別の法律判断が必要な場合は、弁護士など適切な専門家へご確認ください。








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