「タイムカードを押したあとも仕事をしている」
「始業前の準備や朝礼には残業代がつかない」
「固定残業代だから、これ以上は残業代が出ないと言われた」
「うちの会社では、これが普通だから」
そう言われると、仕方がないと思ってしまうかもしれません。
でも、実際に働いた時間と、会社が記録している時間は同じでしょうか。
心当たりがあるなら、働いた時間と賃金計算に使われた時間が合っているか、一度見比べてみてください。
労働時間は、タイムカードの数字だけで決まるものではありません。
実際に使用者の指揮命令下に置かれていたかどうかで判断します。
会社の記録と、実際の働き方が違う。
では、何から確かめればいいんだろう。
この記事では、労働時間の考え方、固定残業代、残しておきたい記録、相談先を順番に見ていきます。
- 実際に仕事を始めた時刻・終えた時刻
- 会社が記録している始業・終業時刻
- 給与明細に支払われている残業代
- 雇用契約書・就業規則に固定残業代の記載があるか
労働時間は「会社にいた時間」ではなく、指揮命令下にあった時間で考える

労働基準法上の労働時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間です。
会社から「これは勤務時間ではない」と言われた。
でも、その説明だけで決まるわけではありません。
実際に何をしていたのか、会社からどんな指示があったのかを見ていきます。
- 会社の指示による始業前の準備や着替え
- 業務終了後に必要な清掃や後片付け
- 参加が義務づけられている朝礼や研修
- 電話や来客対応を求められている休憩時間
- 明示または黙示の指示によって行っている残業
始業前の準備・着替え・朝礼
始業前に制服へ着替え、道具を準備してからタイムカードを押す。
その準備が会社から義務づけられているなら、労働時間に当たる場合があります。
参加が義務づけられた朝礼も同じです。
休憩中の電話番・来客対応
休憩中でも、電話が鳴れば対応しなければならない。
そんな状態では、本当に仕事から離れられているでしょうか。
対応を求められて待機している時間は、「手待時間」として労働時間に当たる場合があります。
「残業しろ」と言われていない残業
上司から「残業してください」とは言われていない。
でも、仕事が終わらず毎日残っている。
会社がその状況を把握しながら業務を続けさせているなど、黙示の指示が認められる場合もあります。
かずきタイムカードを押したあと、上司に頼まれて片づけを続けていた。そんな時間まで、記録がないからと切り捨てられるとは限りません。
固定残業代があっても、追加の残業代が必要なことがある


「固定残業代があるから、何時間働いても追加は出ない」
そんな説明を受けたことはありませんか。
固定残業代は、何時間残業しても一定額で済む制度ではありません。
たとえば、30時間分の固定残業代がある会社で、実際には毎月40時間ほど残業していた場合。
「超えた10時間分が、そのまま未払い」と単純には計算できません。
まず、実際の労働時間に対して法律上必要な割増賃金を計算します。
その額と、固定残業代として支払われた金額を比べる。
不足があれば、追加の支払いが必要です。
ただし、固定残業代の定めが有効かどうかや、計算の対象となる時間外・休日・深夜労働も確認しなければなりません。
- 固定残業代はいくらか
- 何時間分として設定されているか
- 基本給など通常の賃金部分と区別できるか
- 固定残業代を超える分が追加支給されているか
「自分の固定残業代が何時間分なのか分からない」
そんなときは、雇用契約書や労働条件通知書を開いてみよう。
給与明細や就業規則も確認してみてください。



「固定残業代だから出ない」と言われたら、まず給与明細の金額と契約書の記載を見比べてみてください。説明だけで納得する必要はありません。
未払い残業が疑われるなら、まず記録を残す


「毎日、遅くまで働いていました」
そう伝えるだけでは、具体的な時間が分かりにくい。
相談や請求の前に、何時まで働いていたかを確かめられる資料を探してみよう。
タイムカードが手元にない。
それでも、相談を諦める必要はありません。
メールの送信時刻や日報など、別の記録が手がかりになることもあります。
会社に残っている記録
- タイムカード・勤怠システム
- ICカードなどの入退館記録
- パソコンのログオン・ログオフ記録
- 業務メールやチャットの送信時刻
- シフト表・業務日報
- 給与明細
自分でも勤務時間を記録する
会社の勤怠記録と、実際に働いた時間が違う。
そんなときは、自分でも毎日の始業・終業・休憩時間をメモしておきたい。
何の仕事をしていたかも一緒に残します。
たとえば、「19時30分から20時まで翌日の会議資料を作成した」と記録する。
「20時にPCを閉じた」だけより、何をしていたかが伝わります。
PCの起動時間がすべて労働時間になるわけではないからです。
スマートフォンの位置情報履歴や、家族へ送った「今から帰る」というメッセージ。
こうした記録が補助的な資料になることもあります。
会社のデータを保存するときは注意する
退職後は会社のメールや勤怠システムへアクセスできなくなることがあります。
ただし、証拠がほしいからといって、何でも持ち出してよいわけではありません。
顧客情報や営業秘密、ほかの従業員の個人情報を、無関係に大量に持ち出すことは避けてください。
何を保存してよいか迷う場合は、弁護士などへ相談してから進める方法もあります。
給与明細と実労働時間を照らし合わせる
記録を集めたら、実際に働いた時間と給与明細を見比べます。
- 実際の始業・終業・休憩時間を整理する
- 会社の勤怠記録と比較する
- 給与明細の時間外手当を確認する
- 固定残業代がある場合は、その内容を確認する
- 差がある場合は、その期間と金額を整理する
ただし、残業代は「退勤が遅かった時間」を足すだけでは計算できません。
法定労働時間や休日・深夜労働、変形労働時間制の有無などによって計算が変わります。
自分だけで計算するのが難しい場合もあると思います。
そんなときは、集めた記録を相談先へ持参してみてください。
未払い残業代には時効があるので、放置しすぎない
未払い残業代を含む賃金請求権には時効があります。
2020年4月1日以降に支払期日が来る賃金は、法律上の時効期間が5年に延長されました。
ただし、経過措置として当分の間は3年とされています。
時効は原則、それぞれの賃金の支払期日から進みます。
古い月の残業代から、請求できなくなる可能性があるということです。



「退職してから考えればいい」と長く放置すると、古い賃金から時効を迎える可能性があります。気になる場合は早めに確認してください。
未払い残業について相談できる場所


労働基準監督署
残業代が支払われていないなど、労働基準関係法令違反が疑われるなら、労働基準監督署に相談できます。
相談内容や資料によっては監督指導が行われ、未払い賃金の是正につながる場合もあります。
ただし、相談したら必ず会社を調査してもらえるわけではありません。
労基署は、個人の代理人として会社と民事交渉する機関でもありません。
裁判上の代理人として賃金を回収する役割もありません。
相談前に、タイムカードや給与明細、雇用契約書などを整理しておくと話がしやすくなります。
自分でつけた勤務記録も持っていこう。
会社への具体的な請求や代理交渉が必要なら、弁護士への相談も選択肢です。
総合労働相談コーナー
「どこへ相談すればよいか分からない」「残業代以外の職場トラブルもある」という場合は、総合労働相談コーナーも利用できます。
弁護士
具体的に未払い残業代を請求したい、会社との交渉を任せたい、金額が大きいなどの場合は、弁護士への相談も選択肢になります。
退職する場合も、残業の記録は残しておく
未払い残業があるからといって、必ず今すぐ退職しなければならないわけではありません。
退職を考えているなら、勤務記録や給与明細を確認できるうちに整理しておきたい。
退職後は、会社のシステムに入れなくなることもあります。
ただし、会社のデータを無断で持ち出さないよう、保存する資料の範囲には注意してください。
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まとめ|まず「実際に働いた時間」と「支払われた賃金」を確認する
「昔からこうだから」
「みんな残業代をもらっていないから」
そう言われても、未払い残業代の問題がなくなるわけではありません。
- 労働時間は実際に使用者の指揮命令下にあったかで判断する
- 始業前の準備や休憩中の電話番も労働時間になる場合がある
- 固定残業代があっても追加の支払いが必要な場合がある
- 勤怠・給与明細・メール・PCログなどを整理する
- 賃金請求権には時効があるため放置しすぎない
- 必要に応じて労基署・総合労働相談コーナー・弁護士へ相談する
まずは今日から、実際に働いた時間をメモしてみよう。
何時から何時まで働いたか。
その時間に、何の仕事をしていたか。
一行でも残しておけば、会社や相談先に状況を伝える手がかりになります。
※本記事は一般的な情報をまとめたものです。労働時間への該当性、固定残業代の有効性、未払い賃金の金額や請求可能性は、労働契約、就業規則、勤務実態などによって異なります。必要に応じて労働基準監督署や弁護士などへご相談ください。








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