「会社を辞めたい。でも、何から始めればいいんだろう」
退職日を決める。有給はどうする。上司には何と言おう。
辞めた後のお金も気になる。
考えることが次々に出てきて、最初の一歩が見えなくなることがあります。
いきなり退職届を書く必要はありません。
今の自分に必要なことを、一つずつ確認する。そこから始めればいいと思います。
私は労働基準監督官として20年以上、労働条件や退職をめぐる問題に接してきました。
この記事では、辞めるか迷っている段階から退職後の手続きまで、5つのステップで整理します。
- STEP1:本当に今「退職手続き」へ進む段階か確認する
- STEP2:雇用契約・就業規則・退職希望日を確認する
- STEP3:会社へ退職意思を伝える
- STEP4:退職日までの有給・引き継ぎ・返却物を整理する
- STEP5:退職後のお金・手続き・次の仕事を確認する
途中で引き止められたらどうするか。
自分では伝えられないとき、誰に頼れるか。
そうした場面も途中で取り上げます。
STEP1|本当に今「退職手続き」へ進む段階か確認する
「もう辞めたい」。そう思っていても、退職を決めたわけではないかもしれません。
その段階なら、まだ退職手続きに進まなくて大丈夫です。
まず休む。業務を減らせないか相談する。在職中に次の仕事を探す。
辞める以外にも選択肢はあります。
- 有給休暇を取って一度休む
- 休職できるか確認する
- 異動や業務量の調整を相談する
- 在職中に転職活動を始める
- 相談窓口を利用する
かずき「辞めたい」と「今すぐ退職手続きへ進む」は別の話。心身がつらいなら、まず休むことも含めて考えてほしいです。
辞めるかどうか、まだ決めきれない。
そんな人はこちらの記事から。


退職する意思が固まっているなら、次は契約と希望日の確認です。
STEP2|雇用契約・就業規則・退職希望日を確認する


「来月末で辞めたい」と決める前に、雇用契約書と就業規則を開いてみよう。
まず見るのは、契約期間と退職の申し出に関する規定です。
契約期間の定めがあるかどうかで、退職の基本ルールが変わります。
| 契約 | 退職の基本ルール |
|---|---|
| 期間の定めがない | 民法627条では原則として退職の申出から14日を経過すると終了 |
| 期間の定めがある | 原則として契約期間途中の退職には別のルールがある |
期間の定めがない雇用契約なら、民法627条1項では原則として解約の申し入れから2週間で終了します。
会社の就業規則には「1か月前までに申し出る」と書かれているかもしれません。
これは会社の定める手続きです。
法律上の退職の効力と、同じものとして扱わないこと。
余裕があるなら会社の手続きも踏まえて日程を考える。
急いで辞めたい事情があるなら、契約内容と法律上のルールを分けて確認します。
期間の定めがある契約は、同じ2週間の考え方ではありません。
契約期間の途中でも、やむを得ない事由があれば解約できる場合があります。
1年を超える有期契約などには別の特則もあります。
契約期間と事情を確認してください。



「正社員だから2週間で辞められる」とだけ覚えないこと。正社員でも契約期間の定めがある場合があります。まず契約書を見てください。
STEP3|会社へ退職意思を伝える
希望日を考えたら、次は会社に伝える段階です。
上司や就業規則に書かれた窓口へ伝えるのが一般的です。
「言った・言わない」が心配なら、日付と退職意思が分かる書面など、記録の残る方法も考えたい。
- 退職する意思
- 希望する退職日
- 残っている有給休暇
- 引き継ぎに必要な期間
退職理由を、無理に「キャリアアップ」と言い換える必要はありません。
詳しい理由を話したくないなら、「一身上の都合」と伝える方法もあります。
会社への不満を一つずつ説明するより、退職の意思と希望日をはっきり伝える。
まずはそこからです。
実際の切り出し方、上司への伝え方、退職届の出し方はこちらで詳しく整理しています。


引き止められたら「お願い」と「退職できない」を分ける





後任が決まるまで待ってほしい
退職を伝えた後、会社からそう頼まれることがあります。
ここは会社からのお願いと、法律上の退職ルールを分けて考えるところです。
| 会社から言われること | まず確認すること |
|---|---|
| 人手不足だから辞めないで | 会社からのお願いなのか確認する |
| 後任が決まるまで辞められない | 退職時期を無期限に会社へ委ねる必要があるのか確認する |
| 就業規則では○か月前だ | 契約形態と就業規則の内容を確認する |
| 損害賠償を請求する | 言われただけで請求が当然成立するわけではない |
「損害賠償を請求する」と言われたら、不安になると思います。
でも、その言葉だけで支払義務が確定するわけではありません。
返事を急がず、何を根拠に言っているのか確認する。
法律、就業規則、会社の希望を一緒にしないで考えたい。


すでに退職届を受け取ってもらえない、退職日を認めてもらえないなど、実際に退職を妨害されている場合はこちらへ進んでください。


退職をめぐる嫌がらせや職場トラブル全般については、各都道府県労働局などに設置されている総合労働相談コーナーへ相談する方法もあります。
STEP4|有給・引き継ぎ・返却物を整理する
退職日が決まったら、次に考えるのは最後に出勤する日です。
最終出勤日と退職日は、同じ日とは限りません。
退職前に有給を使うなら、その日数も含めて予定を組む。
例えば退職日までに有給をまとめて取れば、最終出勤日はその分早くなります。
- 有給休暇の残日数
- 最終出勤日
- 引き継ぐ業務
- PC・社員証・制服などの貸与品
- 会社から受け取る書類
年次有給休暇は、原則として労働者が取得する時季を指定できます。
会社には一定の場合に時季変更権があります。
ただし、退職日を越えた日へ変更することはできません。



「有給を取りたい日」と「退職日」を先に整理すると、引き継ぎとの調整もしやすくなります。
また、会社から借りているPC、スマートフォン、社員証、制服などがあれば、返却方法を確認します。
健康保険についても、返すものを混同しないようにしたい。
2026年現在、従来の健康保険証の有効期限は終了しています。
マイナ保険証として使うマイナンバーカードは会社へ返しません。
資格確認書を持っている場合は、加入先の案内に従って返却などの手続きを確認します。
STEP5|退職後のお金・手続き・次の仕事を確認する
会社を辞めても、支払いは止まりません。
次の仕事がまだ決まっていないなら、毎月の生活費はいくら必要か。
健康保険や年金はどう切り替えるか。
退職前に一度、書き出してみよう。
- 退職後の生活費
- 雇用保険の基本手当
- 健康保険
- 年金
- 住民税
- 会社から受け取る離職票などの書類
「自分は何の制度を使うんだろう?」と思ったら、こちらの記事から。


退職後の健康保険、年金、雇用保険などを時系列で確認したい場合はこちらです。


退職後に必要になる生活費を具体的に計算したい場合はこちらで確認できます。


自分で会社へ伝えるのが難しい場合は、第三者を使う方法もある


会社へ連絡するだけで、手が止まってしまう。
そんな状態なら、一人でやり取りを続けなくてもいい。
家族に相談する。
社内の窓口や総合労働相談コーナーを頼る。
必要な対応によっては、労働組合や弁護士、退職代行を検討する方法もあります。
ただし、退職代行は運営主体によって対応できる範囲が違います。
- 誰が運営しているサービスか
- 退職意思の伝達だけでよいのか
- 会社との交渉が必要なのか
- 未払い賃金や損害賠償など法律上の争いがあるのか
- 料金と対応範囲が明示されているか
「弁護士監修」と書いてあっても、弁護士があなたの代理人になるとは限りません。
会社と交渉してほしいなら、誰が、どの範囲まで対応するのかを確認してから申し込みたい。
退職代行を使うべきか迷っている場合は、先にこちらで判断してください。


まとめ|退職は「全部を一度に解決」しなくていい
退職日も、有給も、引き継ぎも、辞めた後のお金も。
全部を今日決めようとすると、どこかで手が止まります。
今すぐ決めることと、後で準備することを分けてみよう。
まだ迷っているなら、休む・異動・転職活動などの選択肢も含めて整理します。
雇用契約、就業規則、退職希望日を確認します。
退職意思と希望日を明確にし、必要に応じて書面でも残します。
有給休暇、引き継ぎ、貸与品、必要書類を確認します。
生活費、雇用保険、健康保険、年金、税金、次の仕事を確認します。



退職そのものをゴールにしなくていい。まず自分を守る。そして辞めた後の生活も考えられる状態を作っていきましょう。
まず退職の伝え方から進めるなら、次の記事へ進んでください。


※本記事は2026年9月時点の制度をもとに、一般的な退職手続きを整理したものです。雇用契約の種類、就業規則、退職理由、個別の事情によって取扱いは異なります。具体的な紛争や法的判断が必要な場合は、総合労働相談コーナーや弁護士など適切な相談先へご確認ください。






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