会社を辞めて、毎月の給与が入らなくなる。
それでも、家賃や食費、健康保険料、年金保険料、住民税などの支払いは続きます。

結局、貯金はいくらあれば会社を辞められるんだろう?
「生活費3か月分あれば大丈夫」でしょうか。
それとも、貯金100万円?
必要な金額は、人によって違います。
毎月の生活費だけでなく、退職後の保険料や住民税も考える必要があります。
最終給与や失業給付がいつ入るかも、人それぞれ。
見落としたくないのは、新しい会社から初めて給与が入る日です。
この記事では、退職月から新しい会社の初回給与が入る月まで、お金の出入りを月ごとに整理します。
確認するのは、手元のお金が最も少なくなる時点。
そこから、自分に必要な資金を考えていきましょう。
- 毎月の生活費を確認する
- 健康保険・年金・住民税を支払う月へ入れる
- 最終給与・退職金・失業給付などを実際の入金月へ入れる
- 再就職後の初回給与まで残高を追う
- 残高が最も減る時点から必要資金を判断する
退職前後に何の手続きが必要か分からない場合は、先にこちらで全体の流れを確認してください。


先に結論|退職後に必要なお金は「月別残高」で判断する
「毎月の生活費×3か月」で、本当に足りるのか。
生活費だけでは、退職後に必要なお金を計算しきれません。
次の支出と収入を、実際に支払う月・入金される月へ入れて確認します。
- 家賃・食費・水道光熱費などの生活費
- 健康保険料
- 国民年金保険料
- 住民税
- 転職活動費・医療費・年払い費用など
- 最終給与・退職金・失業給付・初回給与など





大切なのは期間全体の収支ではありません。途中で一度でもお金が足りなくなる月がないかを見ることです。
必要資金は「再就職日」ではなく「初回給与日」まで計算する
転職先が決まった。
でも、入社したその日に給与が振り込まれるわけではありません。
例えば、4月に入社して初回給与は5月。
4月の家賃や食費は、それまでに用意したお金から払うことになります。


退職月 → 離職期間 → 再就職月 → 初回給与が実際に入る月
転職先が決まっている場合
新しい勤務先へ、入社日だけでなく給与の締日と支払日を確認します。
最終給与がいつ入るか、新しい会社の初回給与がいつ入るかも月別表へ入れてください。
転職先が決まっていない場合
転職先が未定なら、必要になる期間も確定できません。
例えば、再就職まで3か月かかった場合。
6か月、9か月と延びたらどうなるか。
期間を変えた複数のケースで、残高を比べてみましょう。
「3か月分あれば十分」という意味ではありません。
仕事探しが長引いた場合に、手元のお金がどこまで持つかを見るための計算です。
STEP1|毎月の生活費を自分の明細から出す
まず見たいのは、世間の平均ではなく自分の家計。
毎月いくら出ていっているのか、実際の支出から確認します。
通帳やクレジットカードの明細、家計簿アプリを開いてみよう。
直近3か月程度を見ると、毎月の支出がつかみやすくなります。
- 家賃・住宅ローン
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
- 日用品
- 医療費
- 民間保険料
- 車の維持費
- 教育・保育費
- ローン・カード分割払い
退職すると通勤費や仕事中の昼食代が減る一方、在宅時間が増えて光熱費が上がったり、転職活動費が増えたりすることもあります。
「退職すれば、この出費は減るはず」と先に差し引かないこと。
減らせると確認できた支出から、計算に反映してください。
クレジットカードは引き落とされる月へ入れる
月別の資金計画では、原則としてカードを使った月ではなく、実際に銀行口座から引き落とされる月へ入れます。
退職前に使ったカード代が退職後に引き落とされる場合も、退職後に必要な資金です。
分割払いやリボ払いも、購入金額全体ではなく、各月に実際に支払う金額を入れます。
生活費の平均は「自分との差」を見るために使う
自分の生活費が分かったら、平均額と比べてみるのも一つの方法です。
総務省の2025年家計調査では、1か月の平均消費支出は次のとおりです。
| 世帯 | 1か月の平均消費支出 |
|---|---|
| 単身世帯 | 173,042円 |
| 二人以上の世帯 | 314,001円 |
これは退職者だけを対象とした平均ではありません。また、家計調査の消費支出と、退職後に自分で払う健康保険料・年金・住民税などは分けて考える必要があります。
平均より多いから退職できない、少ないから安心という意味ではありません。
あくまで自分の家計との比較材料にしてください。
STEP2|健康保険・年金・住民税を実際の支払月へ入れる
ここからが、通常の家計簿と退職後の資金計画の大きな違いです。
健康保険料、年金、住民税は、誰でも同じ金額ではありません。
それぞれの制度の記事を参考に、自分が払う金額と時期を確認して表に入れてください。
健康保険料
退職後すぐに次の会社の健康保険へ入らない場合は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養などから加入先を確認します。
加入先によって金額が変わるため、この記事で一般的な金額を当てはめるのではなく、実際に確認した保険料を使ってください。


国民年金保険料
第1号被保険者になる場合は、国民年金保険料も支出へ入れます。
2026年度は月額17,920円ですが、退職日や再就職日によって実際に保険料が発生する月は変わります。
夫婦ともに国民年金の第1号へ切り替わるなら、保険料は2人分。
1人分だけで計算しないようにしてください。


住民税
住民税は、退職時に一括徴収される場合と、退職後に納付書で支払う場合などがあります。
年額を12で割って毎月へ入れるのではなく、給与明細や納税通知書を見て、実際にお金が出る月へ入れます。
退職時の残額と、その後6月から始まる新年度分も分けて確認してください。


年払い・一時的な支出も忘れない
毎月の生活費だけでなく、計算期間中に次のような支払いがあれば、その月へ入れます。
- 転職活動の交通費・証明写真・仕事用の服
- 通院・治療費
- 自動車税・車検
- 賃貸の更新料
- 年払いの民間保険料
- 引っ越し費用
| 支出 | 確認するもの | 表へ入れる時期 |
|---|---|---|
| 生活費 | 通帳・カード・家計簿 | 毎月 |
| 健康保険 | 保険者・自治体 | 実際の納付月 |
| 年金 | 加入区分・納付額 | 実際の納付月 |
| 住民税 | 給与明細・納税通知書 | 実際の支払月 |
| その他 | 請求書・契約書など | 実際の支払月 |
STEP3|退職後に入るお金は「実際の入金月」へ入れる
入ってくるお金も、総額だけでは判断できません。
いつ振り込まれるのかを確認します。
最終給与
最終給与が退職月に入るとは限りません。
また、社会保険料や住民税の一括徴収などによって、通常月より手取りが少なくなることがあります。
給与支払日と控除予定額を会社へ確認し、手取り見込額を入れてください。
退職金
退職金がある場合も、制度の有無・支払日・金額を確認します。
「退職金は出るはず」と思っていても、金額や支払日がまだ分からないことがあります。
基本の計算には、会社の案内などで確認できた金額と入金月を使いましょう。
失業給付
雇用保険の基本手当は、退職後すぐに全額が入るものではありません。
受給資格、待期、給付制限、認定日などによって、最初の振込時期は変わります。
所定給付日数分を一括して退職月の収入に入れるのではなく、ハローワークで確認できた振込見込みを実際の月へ入れてください。


傷病手当金などの給付
退職後に受けられる可能性がある給付も、制度によって要件と支給時期が違います。
申請する予定だけで確定収入へ入れず、支給の見込みを確認してから反映してください。


「もらえる可能性がある」だけの給付や副業収入、資産売却代金などを最初から確定収入として入れると、必要資金を少なく見積もる原因になります。
まず「その収入がなくても持つケース」を作り、入金時期が確認できたら別ケースとして追加すると比較しやすくなります。
STEP4|月別キャッシュフロー表を作る
ここまで確認した数字を、月ごとの表に並べてみましょう。
紙に書いても、表計算ソフトを使っても構いません。
見るべきなのは、収入・支出・残高が、月ごとにどう変わるかです。
| 月 | 生活費 | 保険・年金・住民税 | その他 | 支出合計 | 確定入金 | 月間差額 | 月末残高 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 退職月 | 入力 | 入力 | 入力 | 計算 | 入力 | 計算 | 計算 |
| 1か月後 | 入力 | 入力 | 入力 | 計算 | 入力 | 計算 | 計算 |
| 2か月後 | 入力 | 入力 | 入力 | 計算 | 入力 | 計算 | 計算 |
| 再就職月 | 入力 | 入力 | 入力 | 計算 | 入力 | 計算 | 計算 |
| 初回給与月 | 入力 | 入力 | 入力 | 計算 | 入力 | 計算 | 計算 |
計算は2つだけ
月間差額 = その月の確定入金 − その月の支出
月末残高 = 前月末残高 + 月間差額
現在の貯金で足りるか確認したい場合は、退職後の生活に実際に使える預貯金を開始残高へ入れます。
投資資産や、教育資金など別の目的で使わないお金まで「使える貯金」に含める必要はありません。
STEP5|残高が最も減る時点を確認する
表ができたら、各月の残高を比較します。
重要なのは「期間中に合計いくら使うか」ではなく、途中で残高が最も少なくなる時点です。
あとから失業給付や初回給与が入る予定でも、安心とは限りません。
その前に支払いが重なれば、一時的にお金が足りなくなるからです。



退職後のお金で怖いのは「最終的には足りるのに、入金前に一度足りなくなる」ことです。総額ではなく時間軸で見てください。
月末だけでなく支払日も見る
月別表は全体像を見るためのものなので、大きな支払いがある月は日付まで確認します。
例えば、8月5日に20万円の支払いがあり、8月25日に25万円が振り込まれる場合。
月全体では5万円のプラスです。
それでも、5日の支払いに間に合うよう、先に20万円を用意しておく必要があります。
特に次の月は、支払日と入金日まで確認しておくと安心です。
- 退職月
- 住民税など大きな支払いがある月
- 失業給付の初回入金月
- 再就職後の初回給与月
転職先が未定なら3つのケースを作る
再就職時期が決まっていない場合は、1つの予想だけで退職後の資金を判断しない方が安全です。
| ケース | 例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 早め | 3か月で再就職 | 早く決まった場合の残高 |
| 基本 | 6か月で再就職 | 想定する中心ケース |
| 長期化 | 9か月で再就職 | 活動が長引いた場合の残高 |
3・6・9か月は、あくまで計算例です。
自分の状況に合わせて期間を変えてください。
比較することで、「○月まで決まらなければ固定費を見直す」「○月までは在職中に転職活動を続ける」といった判断もしやすくなります。
在職中に転職活動するか、退職後に集中するか迷っている場合はこちらも確認してください。


退職前に確認するお金のチェックリスト
退職前に確認できる項目が多いほど、資金計画の精度は上がります。
- 退職日と最終出社日
- 最終給与の支払日と手取り見込額
- 退職金の有無・金額・支払日
- 健康保険の加入先と保険料
- 本人・配偶者の年金加入区分
- 住民税の未徴収額と納付時期
- 失業給付を受ける場合の手続き
- 世帯から生活費へ使える収入
- 転職活動に必要な費用
- 再就職先の給与締日と初回給与日
金額や入金日が分からない項目は、無理に推測しなくて大丈夫。
いったん「未確定」として残しておきましょう。
その数字が分かったときに更新すれば、資金計画も現実に近づいていきます。
計算したら「退職できる・できない」ではなく次の行動を決める
この表は、「辞めるべき」「辞めないべき」を決めるものではありません。
手元のお金がいつまで持つのか。
それを見たうえで、退職時期や次の働き方を自分で考えるためのものです。
| 計算結果 | 次に確認すること |
|---|---|
| 十分な余裕がある | 退職時期・転職活動の進め方を検討 |
| 余裕が小さい | 固定費・退職時期・転職開始時期を再確認 |
| 途中で不足する | 支出見直し・利用可能な制度・計画変更を検討 |
| 数字がまだ分からない | 会社・自治体・保険者などへ確認 |
支払いそのものが難しくなっている場合は、納付書などを放置せず、健康保険、年金、住民税それぞれの窓口へ早めに相談してください。
退職後の生活費についてよくある質問
- 退職前に貯金はいくらあればいいですか?
-
全員に共通する金額はありません。退職月から初回給与入金月までの支出と確定収入を月別に並べ、残高が最も減る時点を確認してください。
- 生活費は3か月分あれば足りますか?
-
3か月分で足りるとは一律にいえません。転職先が決まっていない場合は、3か月・6か月・9か月など複数の期間で残高を比較してください。
- 失業保険をもらえるなら、その分だけ貯金を減らして考えていいですか?
-
総額をそのまま差し引くのは避けた方がよいです。受給条件や入金時期を確認し、実際に振り込まれる見込みの月へ入れてください。
- 退職金がある場合は必要資金から引いていいですか?
-
支払日と手取り見込額を確認できている場合は、その入金月へ入れます。入金前に支払いがあるなら、それまでの手元資金は別に必要です。
- 計算したら途中でお金が足りません。どうすればいいですか?
-
固定費、退職時期、転職活動を始める時期、利用できる制度を順番に確認します。すでに納付が難しいものがある場合は、各制度の窓口へ早めに相談してください。
まとめ|「何か月分」ではなく、自分の支払月と入金月で計算する
退職後に必要なお金は、「平均生活費×○か月」で決めるものではありません。
退職月から初回給与が入る月まで、自分のお金を時間軸で並べて確認します。
自分の通帳・カード明細などから実際の支出を確認します。
一般的な平均ではなく、自分の金額を実際の支払月へ入れます。
最終給与・退職金・失業給付などを実際の入金月へ入れます。
再就職した時点ではなく、新しい給与が実際に入るところまで確認します。
その時点まで持ちこたえられるかを確認し、必要なら退職時期や支出、転職計画を見直します。
必要資金が見えてきたら、「みんなはいくら貯めているか」と比べる必要はありません。
見るのは、「自分の場合、いつまで資金が持つのか」ということ。
ここまで整理できたら、転職先が決まる前に退職するか、在職中に転職活動を続けるかも判断しやすくなります。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。健康保険料、年金保険料、住民税、雇用保険などの金額・要件・支給時期は、退職日、所得、年齢、世帯状況、加入先、自治体その他の個別事情によって異なります。実際の金額や手続きは、勤務先、保険者、市区町村、日本年金機構、ハローワークなどへご確認ください。



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