会社を退職すると、厚生年金の資格を失います。ただし、その後に必要な年金手続きは全員同じではありません。
- 次の会社へすぐ入社する
- 入社までに空白期間がある
- 自営業や無職になる
- 配偶者の扶養に入る
このような退職後の状況によって、厚生年金に入り続けるのか、国民年金へ切り替えるのか、配偶者の勤務先を通じて手続きするのかが変わります。
また、「次の会社まで1日空くだけでも手続きが必要なのか」「1日空いたら国民年金保険料が1か月分かかるのか」は、分けて考える必要があります。加入資格の切り替えが必要な期間があっても、その月の国民年金保険料が別に発生するとは限りません。
この記事では、主に20歳以上60歳未満の会社員を対象に、退職後の加入区分、手続き期限、必要書類、退職月・再就職月の保険料、支払いが難しい場合の制度をケース別に整理します。
先に結論|退職後の年金手続きは次の働き方で変わる
退職後は、まず「次にどの公的年金へ加入するか」を確認します。判断の基本は次の3つです。

すぐ再就職して厚生年金に入る場合
退職後、空白期間を挟まずに次の会社の厚生年金へ加入する場合は、新しい勤務先が厚生年金の資格取得手続きを行います。
入社日と厚生年金の資格取得日が一致しているか、新しい勤務先の人事・給与担当へ確認してください。前の会社の厚生年金資格を失った日から次の資格取得日までに空白がなければ、通常は自分で国民年金第1号被保険者への切り替えを行う場面はありません。
離職期間がある・自営業や無職になる場合
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が、退職後すぐに厚生年金へ入らず、配偶者の第3号被保険者にもならない場合は、原則として国民年金第1号被保険者への切り替えが必要です。
転職先が決まっていても、前の会社の厚生年金資格を失った日と、新しい会社の厚生年金資格を取得する日の間に空白があれば、その期間について第1号被保険者の届出が必要になることがあります。
配偶者の扶養に入る場合
厚生年金に加入している配偶者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者は、要件を満たせば国民年金第3号被保険者になります。手続き先は原則として市区町村ではなく、配偶者の勤務先です。
年収だけで第3号になれると判断せず、配偶者の勤務先へ、健康保険の扶養と国民年金第3号の両方について確認してください。勤務先での手続きが完了するまでは、扶養に入れる予定だけで年金手続きが終わったとはいえません。
退職後に国民年金への切り替えが必要か確認する
公的年金には、国民年金を基礎とし、その上に会社員などが加入する厚生年金があるという関係があります。会社を退職して厚生年金の資格を失っても、20歳以上60歳未満であれば、原則としていずれかの加入区分に入ります。
第1号・第2号・第3号被保険者の違い
退職前後に関係する加入区分は、次のとおりです。
| 加入区分 | 主な対象 | 手続き・保険料 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業、無職、離職期間中の人など | 原則として本人が手続きし、国民年金保険料を納める |
| 第2号被保険者 | 厚生年金に加入する会社員・公務員など | 勤務先が手続きし、保険料は給与等から控除される |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者 | 配偶者の勤務先を通じて手続きし、本人が国民年金保険料を個別に納める必要はない |
退職後に国民年金へ切り替えるかを判断するときは、「現在働いているか」だけでなく、厚生年金の資格取得日と資格喪失日、第3号に該当するかを確認します。
数日だけ会社に属さない期間がある場合
前の会社を退職した後、次の会社へ入るまで数日しか空かない場合でも、その期間に厚生年金へ加入しておらず、第3号にも該当しなければ、第1号被保険者への切り替え対象になることがあります。
ただし、ここでいう「加入資格の切り替えが必要」と、「国民年金保険料が1か月分発生する」は同じ意味ではありません。保険料については、退職日、厚生年金の資格喪失日、再就職日、再就職先での資格取得日をもとに月単位で確認します。
「空白期間が短いから何もしなくてよい」と判断せず、まず資格の届出が必要かを市区町村や年金事務所へ確認してください。
退職者に扶養されていた配偶者も確認する
退職した本人が厚生年金の第2号被保険者で、その人に扶養されていた配偶者が第3号被保険者だった場合、本人の退職に伴って配偶者も第3号ではなくなります。
本人だけでなく、配偶者についても第1号への切り替えや、別の家族の扶養に入る手続きが必要かを確認してください。夫婦2人分の国民年金保険料が発生する可能性もあるため、退職後の支出を考える際にも見落とせない点です。
60歳以上で退職した場合は同じ説明を当てはめない
国民年金への強制加入は原則として20歳以上60歳未満が対象です。そのため、60歳以上で退職した人には、20歳以上60歳未満の切り替え手続きをそのまま当てはめられません。
一方、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない場合や、満額に近づけたい場合などは、60歳以上65歳未満で任意加入できることがあります。年齢、加入記録、年金の受給状況によって扱いが異なるため、年金事務所や街角の年金相談センターへ確認してください。
国民年金への切り替え手続き|期限・窓口・必要書類
第1号被保険者への切り替えが必要な場合は、原則として自分で届出を行います。会社が厚生年金の資格喪失手続きをしても、それだけで国民年金第1号への切り替えが完了するとは限りません。

期限は原則として退職日の翌日から14日以内
国民年金第1号被保険者の届出期限は、原則として退職日の翌日から14日以内です。
会社の書類が届かない場合や14日を過ぎた場合も、加入手続きが不要になるわけではありません。退職日と現在の加入状況が分かる資料を用意し、住所地の市区町村の国民年金窓口へ早めに相談してください。必要書類は窓口や状況によって異なります。
手続き先は市区町村窓口・マイナポータルなど
第1号被保険者への加入手続きは、住所地の市区町村の国民年金担当窓口で行えます。日本年金機構は、対象となる手続きについてマイナポータルからの電子申請も案内しています。
一方、第3号被保険者になる場合は、原則として配偶者の勤務先を通じて手続きします。第1号と第3号では手続き先が異なるため、自分の加入区分を決めてから動くことが大切です。
手続きに必要なものを確認する
一般的には、次のものを確認します。
- 基礎年金番号が分かる書類、またはマイナンバーが分かる書類
- 本人確認書類
- 退職日や厚生年金の資格喪失日を確認できる書類
- 代理人が手続きする場合の委任状など
自治体では、離職票、退職証明書、健康保険資格喪失証明書などの提示を求めることがあります。必要書類を一律に決めつけず、手続き先の案内を事前に確認してください。
退職前に会社の担当者へ確認すること
退職日が決まったら、会社の人事・給与担当へ次の順序で確認すると整理しやすくなります。
- 退職日と厚生年金の資格喪失日を確認する
- 資格喪失日を確認できる書類の名称と交付予定日を聞く
- 扶養している配偶者がいる場合、その資格変更も確認する
- 企業年金や企業型DCの案内があるか確認する
健康保険、雇用保険、住民税なども同時期に手続きが発生します。必要書類の全体像は、退職前にやること・退職後の手続き一覧で確認できます。
退職月・再就職月の年金保険料はどうなる?
退職者次の会社まで数日空くだけでも、国民年金保険料が1か月分かかるの?
退職日と再就職日が同じ月にあると、「厚生年金と国民年金を二重に払うのでは」と不安になるかもしれません。この場面では、次の2段階に分けて確認します。
- 厚生年金に入っていない期間について、第1号への資格切り替えが必要か
- その月の国民年金保険料が実際に発生するか
空白期間があれば第1号への届出が必要になることがありますが、届出をしたことだけで国民年金保険料が必ず1か月分追加されるわけではありません。


月末に退職した場合
厚生年金の資格喪失日は、通常、退職日の翌日です。例えば3月31日に退職すると、厚生年金の資格喪失日は4月1日になります。再就職せず第3号にもならない場合は、4月から第1号被保険者となり、4月分から国民年金保険料を納めます。
退職月である3月は厚生年金の加入月となるため、通常は3月分の厚生年金保険料が給与から控除されます。
月の途中で退職し、月末まで再就職しない場合
例えば3月15日に退職すると、厚生年金の資格喪失日は3月16日です。その後、3月末まで厚生年金へ再加入せず、第3号にもならなければ、3月は国民年金第1号として保険料を納める月になります。
前の会社では、厚生年金の資格を月の途中で失っているため、原則として3月分の厚生年金保険料は発生しません。最終給与から何月分の厚生年金保険料が控除されているか分からない場合は、給与明細と会社の給与担当へ確認してください。
月をまたいで再就職する場合も、月ごとに加入状況を確認します。例えば3月15日に退職し、4月1日に新しい会社の厚生年金資格を取得した場合、3月16日から31日までは第1号被保険者となり、3月分の国民年金保険料を納めます。4月は新しい会社の厚生年金に加入するため、通常、4月分の国民年金保険料を別に納める必要はありません。
一方、3月31日に退職し、4月1日に新しい会社の厚生年金資格を取得した場合は、厚生年金に加入していない空白期間がありません。この場合、通常は第1号被保険者への切り替えは必要なく、3月分は前の会社、4月分は新しい会社の厚生年金の加入月となります。
同じ月のうちに再就職して厚生年金に入った場合
例えば3月15日に退職し、3月25日に新しい会社の厚生年金資格を取得した場合、3月16日から24日までについて第1号への切り替えが必要になることがあります。
一方、3月末時点では新しい会社の厚生年金に加入しているため、日本年金機構が示す例では、3月分について国民年金保険料を別に納める必要はありません。すでに国民年金保険料を納めていた場合は、後日還付されることがあります。
ただし、実際の扱いは届出された資格取得日・資格喪失日の記録で確認します。「同じ月に再就職したから手続き不要」「1日空いたから必ず1か月分必要」と自己判断せず、市区町村や年金事務所へ日付を伝えて確認してください。
国民年金保険料はいくら・いつ・どうやって払う?
第1号被保険者になると、会社の給与天引きではなく、自分で国民年金保険料を納めます。
2026年度の国民年金保険料は月額17,920円
2026年度の国民年金保険料は、月額17,920円です。保険料額は年度によって変わるため、退職時点の年度の金額を日本年金機構で確認してください。
付加保険料や前納制度などもありますが、この記事では退職直後に必要な基本手続きを優先します。前納が自分に適しているかは、再就職予定や資金状況を踏まえて判断してください。
国民年金保険料が発生する月と金額を確認したら、生活費や健康保険料、住民税と合わせて資金計画へ反映します。年金保険料を含めた退職後の必要資金の計算方法では、初回給与が入る月までの残高推移を確認できます。
納付期限と納付方法
毎月の国民年金保険料の納付期限は、原則として対象月の翌月末日です。主な納付方法には次のものがあります。
- 日本年金機構から届く納付書
- 口座振替
- クレジットカード
- スマートフォンアプリ
- ねんきんネットを利用した納付
納付方法によって申出や利用条件が異なります。納付書がまだ届かない場合も、加入記録や送付先に問題がないか、市区町村または年金事務所へ確認してください。
第3号被保険者は個別に保険料を納めない
第3号被保険者は、国民年金保険料を本人が個別に納める必要はありません。ただし、配偶者の勤務先を通じた第3号の届出が完了していることが前提です。
健康保険の扶養条件や必要書類を確認したい場合は、退職後の健康保険はどうする?任意継続・国保・家族の扶養を比較をご覧ください。健康保険の扶養と年金の第3号は関連しますが、確認する制度や届出を分けて考える必要があります。
保険料の支払いが難しいときは免除・納付猶予を確認する
退職後に収入が減り、国民年金保険料の支払いが難しくなることもあります。その場合は、納付しないままにするのではなく、免除制度や納付猶予制度の対象になるかを確認してください。
退職・失業だけで自動的に免除されるわけではない
退職したことや現在無職であることだけで、全国一律に国民年金保険料が免除されるわけではありません。免除や納付猶予を受けるには申請が必要で、所得などの審査があります。
失業等による特例では、失業した本人の前年所得を除外して審査を受けられる場合があります。ただし、免除申請では本人だけでなく、配偶者や世帯主の所得も審査対象になるため、本人が失業していても承認されないことがあります。
免除・納付猶予・未納は扱いが異なる
| 区分 | 受給資格期間 | 将来の老齢基礎年金額 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 保険料を納付 | 算入される | 納付月として反映 | 納期限や納付方法を確認する |
| 免除 | 算入される | 免除区分に応じて一部反映 | 一部免除は残額を納めないと未納扱いになる |
| 納付猶予 | 算入される | 追納しなければ年金額に反映されない | 原則として20歳以上50歳未満が対象 |
| 未納 | 算入されない | 反映されない | 障害・遺族基礎年金の要件にも影響する可能性がある |
免除や納付猶予の承認期間は、一定の範囲で後から追納できます。単に支払いを止めるのではなく、申請して承認を受けることが重要です。
申請前に必要書類と審査対象を確認する
失業等による特例を申請する場合は、雇用保険受給資格者証、雇用保険受給資格通知、離職票など、失業した事実を確認できる書類が必要になることがあります。
申請は市区町村の国民年金窓口や年金事務所で行えるほか、対象手続きは電子申請も案内されています。免除・納付猶予は申請できる期間に限りがあり、年度ごとの申請が必要になる場合もあるため、早めに相談してください。
離職票を受け取った後に行う失業保険の手続きについては、失業保険の基本と自己都合退職時の条件も参考にしてください。失業保険を受けることと、国民年金保険料の免除が承認されることは別です。
参考:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
退職後は年金だけでなく住民税の支払いが続くこともあります。支出の時期を整理する場合は、退職後の住民税はどうなる?支払い時期・納付方法と翌年の請求を時系列で整理もあわせて確認してください。
配偶者の扶養と企業年金も忘れずに確認する
退職後の年金手続きでは、公的年金の加入区分だけでなく、配偶者の手続きと勤務先独自の企業年金も確認します。
配偶者の扶養に入る場合は勤務先へ確認する
第3号被保険者になるための手続きは、原則として厚生年金に加入している配偶者の勤務先を通じて行います。
一般に、第3号被保険者は20歳以上60歳未満で、第2号被保険者に扶養される配偶者が対象です。収入などの要件があり、勤務先での社会保険加入要件に該当する場合は自分自身が厚生年金へ加入することもあります。
扶養に入る予定が決まったら、配偶者の勤務先へ次を確認してください。
- 健康保険の被扶養者と国民年金第3号の届出を行うか
- 扶養認定に必要な収入関係の書類
- 退職日や資格喪失日を示す書類
- 届出後、資格取得をどの書類で確認できるか
企業型DCは移換期限を確認する
退職した会社で企業型DCに加入していた人は、公的年金とは別に移換手続きを確認します。資格喪失後6か月以内に手続きしないと自動移換され、資産が運用されない状態や管理手数料の負担が生じることがあります。退職時の案内で期限と問い合わせ先を確認してください。
退職時に受け取った企業年金の案内を確認し、不明な場合は元の勤務先、転職先の制度担当者、運営管理機関などへ問い合わせてください。この記事では、移換先の商品選びや運用判断までは扱いません。
退職後の年金手続きでよくある質問
- 次の会社まで1日空くだけでも国民年金の手続きは必要ですか?
-
前の会社の厚生年金資格を失った日と、新しい会社の資格取得日の間に空白があり、その間に第3号にも該当しない場合は、第1号への切り替え対象になることがあります。
ただし、1日空いたことだけで国民年金保険料が必ず1か月分発生するとは限りません。退職日と再就職日だけでなく、両社の厚生年金資格の取得日・喪失日を伝えて、市区町村や年金事務所へ確認してください。
- 会社の書類が14日以内に届かない場合はどうすればよいですか?
-
書類が届くまで放置せず、住所地の市区町村の国民年金窓口へ相談してください。退職日や資格喪失日を確認するために利用できる書類は、自治体や状況によって異なる場合があります。
- 失業中なら国民年金保険料は免除されますか?
-
失業しただけで自動的に免除されるわけではありません。申請と審査が必要です。失業等による特例を利用できる場合でも、配偶者や世帯主の所得が審査され、承認されないことがあります。
- 配偶者の扶養に入れば国民年金保険料はかかりませんか?
-
要件を満たして第3号被保険者となり、配偶者の勤務先を通じた届出が完了すれば、国民年金保険料を本人が個別に納める必要はありません。扶養に入る予定だけで判断せず、第3号の資格取得が完了したかを確認してください。
- 60歳以上で退職した場合も国民年金への切り替えが必要ですか?
-
国民年金への強制加入は原則として20歳以上60歳未満が対象です。60歳以上は、加入記録などによって任意加入を検討できる場合があります。年金の受給状況も含めて、年金事務所などへ確認してください。
まとめ|加入区分・日付・手続き先を確認する
退職後の年金手続きは、次の勤務先が決まっているか、空白期間があるか、配偶者の扶養に入るかによって変わります。
- 退職日と厚生年金の資格喪失日を確認する
- 次の会社の入社日と厚生年金資格取得日を確認する
- 空白期間がある場合は第1号への切り替えを確認する
- 配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先へ第3号の手続きを確認する
- 退職者に扶養されていた配偶者の資格変更も確認する
- 支払いが難しい場合は、未納のままにせず免除・納付猶予を相談する
- 企業年金や企業型DCの手続きを公的年金と分けて確認する
特に、加入資格の切り替えと、国民年金保険料が実際に発生する月は、分けて考えることが大切です。日付や加入記録に疑問がある場合は、会社の担当者、市区町村の国民年金窓口、年金事務所へ確認してください。









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